高齢者の骨折について
高齢者の身の回りには怪我のリスクが潜んでいます。
中でも転倒は身近な怪我の原因となります。
つまづく程度で済めばいいのですが、下手に転んでしまうと大ケガにつながる恐れがあります。
転倒によるケガのうち、寝たきりになりやすいのが「骨折」です。
高齢者が骨折しやすい理由、骨折の治療法や予防法を詳しくまとめます。
高齢者が骨折しやすい理由
高齢者が骨折してしまう原因は2つあります。
- 筋力低下による転倒
運動を日課として筋力を鍛えていた人でも、還暦(60歳)を過ぎた頃から筋肉量は減っていきます。
特に腸腰筋(太ももを上げる筋肉)の筋力がダウンするため、足が思いどおりに上がらなくなります。
そのため転倒しやすくなり骨折につながります。
- 骨粗しょう症
骨は古くなると破壊されますが、骨代謝を繰り返して新しい骨を作り出します。
丈夫な骨を維持するには、骨代謝のバランスが取れていなくてはなりません。
しかし50歳頃から破壊される骨の量が増える一方、新しく作られる骨量が減少して骨密度が下がり、骨がスカスカ状態になってしまいます。
この状態が「骨粗しょう症」です。
骨粗しょう症は女性に多い疾患ですが、特有の理由があります。
男性より骨格が小さいうえに、女性は妊娠や授乳期に大量のカルシウムを必要とします。
また、「エストロゲン」という女性ホルモンには骨密度を維持する働きがありますが、閉経と共に減少し、50歳を迎えるようになると骨密度が急降下するのです。
骨折しやすい部位
高齢者が骨折しやすい4つの部位は下記のとおりです。
- 大腿骨近位部(だいたいこつきんいぶ)骨折
高齢者によく見られる太ももの付け根にある大腿骨の骨折です。
主に転倒により骨折して寝たきりになってしまうケースが増えています。
- 脊椎圧迫(せきついあっぱく)骨折
転倒した時に尻もちをついて起こる背骨の骨折です。
骨粗しょう症が進むと日常的な動作だけで骨折することがあり、「いつのまにか骨折」と呼ばれています。
- 上腕骨近位部(じょうわんこつきんいぶ)骨折
腕の付け根部分の骨が折れることがあります。転倒した時に床や壁に肩を打ち付けたり、転倒した際に肘や手を床についたりして骨折します。
- 橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折
手首の骨が骨折することです。転んで床に手をついて骨折するケースが多いです。
骨粗しょう症の女性に多く見られます。
骨折の治療法
骨折時の治療は2つの方法に大別されます。
骨折した本人だけで決められないため、必ず医師や家族とよく相談しましょう。
- 手術療法
骨折の治療は生活状況や持病により決定します。
手術をすれば、骨折前と同じように歩行できる可能性が十分考えられます。
ただし大腿骨骨折の場合は、安静期間が長くなるため筋力低下につながり、認知症や褥瘡(じょくそう)などを引き起こす恐れがあります。
できる限り手術療法で治療を進めて、早期の段階からリハビリを実施し、機能回復を目指しましょう。
- 保存療法
ギプスで固定して骨がつながるのを待つのが、保存療法です。
脊椎圧迫骨折や橈骨遠位端骨折、上腕骨近位部骨折の場合、骨折部が安定していれば保存療法で治療できます。
なお、数週間〜数ヶ月間 骨折部を安静にする必要があります。
骨折の予防
骨折の二大原因である「転倒」と「骨粗しょう症」を防ぐことが、骨折を予防する近道です。
手軽にできる骨折の予防策として、日常生活をぜひ見直してみましょう
- 転倒を防止
転倒を防止するには歩行運動が有効だと考えられています。
厚生労働省の指針によると、70歳以上の高齢者の場合、男性は6700歩、女性5900歩を歩くことを目標にしています。
運動を習慣にしてこなかった方は、無理をすると体調を崩すかもしれないので、自分のできる範囲で歩行運動をしましょう。
- 骨粗しょう症予防
骨粗しょう症は自覚しないまま進行する病気です。
骨折してはじめて骨粗しょう症だと気づく高齢者も多いようです。
生活習慣を改善することが、骨粗しょう症を予防する第一歩です。
◎生活習慣の改善ポイント
① 定期検診
年2〜3回、病院で骨粗しょう症の検診を受けましょう。
骨粗しょう症と診断された場合、注射や内服で進行を抑えられます。
② 運動
運動すると骨に刺激が加わり、強さがアップします。
軽い運動で、骨密度を高めましょう。
③ 食生活の見直し
栄養バランスの整った食事を心がけることが大切です。
次の3つの栄養素を含む食品を積極的に摂取しましょう。
・カルシウム : 乳製品、小魚、小松菜、ひじきなど
・ビタミンD : 青魚、レバー、チーズ、バターなど
・ビタミンK : 納豆、レバー、海藻類、モロヘイヤなど
特にビタミンDは日光浴をすると効果的です。
骨折による寝たきりを防ぐには
骨折を防ぐために、転倒しない対策を実施するだけでなく、骨粗しょう症に対し生活習慣の見直しが必要です。
食生活の改善、適度な運動など普段から努めて取り入れて、骨折知らずの体づくりを目指しましょう。
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