認知症の方とのコミュニケーション術「バリデーション療法」とは?

高齢化が進んでいる日本では、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。実際に、認知症の家族や介護サービス利用者とのやり取りが上手くいかずに、悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

ところで、認知症ケアの中でも効果的なコミュニケーション法として注目されているものに「バリデーション療法」があります。この記事では、「バリデーション」の基本的な考え方や実践するためのポイントを詳しく解説いたします。

認知症の方に寄り添った、温かいケアにつながるきっかけになれば幸いです。

「バリデーション療法」の目的や特徴

個人差はあるものの、認知症の方が感じている世界と私たちのいる現実世界は異なるということを理解しておきましょう。前提として世界観が「違っている」認識を持った上で、認知症の方がいる世界に私たちが入っていくこと・理解を示すことが重要になります。そして、その助けになるのが「バリデーション療法」。介護の分野においては「その方の感情を認め、無条件で承認する」という意味で用いられます。

悲しみや怒り、不安といったマイナスな気持ちを抑え込まずに表に出してもらい、そうしたネガティブな部分も否定せずしっかり受け止めて、その方の「本当の思い」を引き出すことを目的としています。

苦しい気持ちに寄り添って支援を行い、その方の尊厳を回復させて、生きる希望を持ってもらうことにもつながる療法なのです。

バリデーションの基本的な3つのテクニック

認知症の方が訴える言葉そのものよりも、その奥にある「感情」に寄り添って共感・受容する意識を何よりも大切にするのがポイントです。

「共感・受容」を相手に示す手法はたくさんありますが、今回はよく使用する3つのポイントをご紹介します。状況に合わせて適宜取り入れてみましょう。

  • 声のトーンの使い分け

「相手が感情的でないとき」は、低めのトーンではっきりとした温かい口調を心がけながら話します。

その一方で「相手が感情的なとき」は、その思いに共感し、声のトーンや話すテンポを合わせるように工夫しましょう。

  • リフレーシング(反復)

相手が話した内容でもっとも重要だと思われるキーワードをそのまま繰り返します。

声のトーン、大きさ、話すテンポなどを一致させて正しくリフレーシングをすると、「きちんと伝わった」と安心してもらえます。

  • オープンクエスチョン

「いつ」「どこで」「誰が」「「何を」「どのように」の質問を一つずつ丁寧に重ねていき、相手が伝えたい物事を話しやすくできるように促します。

5W1Hに似ていますが、「なぜ」は認知症の方にとっては説明が難しいため、使わないようにしましょう。

バリデーションの基本的な態度5つ

認知症の方の言動には必ず理由があると考え、着実に会話を重ねてその理由を探っていきましょう。

ここでは、その際の基本的に重視すべき態度を5つご紹介します。

  • 傾聴する

ただ「聞く」のではなく、当事者の気持ちを汲み取りながら耳を傾けます。「理解したい」「教えてほしい」という気持ちで接する姿勢が重要です。

例えば「部屋に誰かいる」と訴えた場合は、まずは「部屋に誰かいるのですね」とその言葉をリフレーシング(反復)して一旦受け入れてください。

そして「どのあたりにいますか?」「どんな人ですか?」と質問し、私たちの現実ではなくその方が見ている世界について教えてもらいます。

  • 共感する

ある程度の客観性を保ちながら、相手が感じている物事を想像し、寄り添う姿勢を示していきましょう。

もし自分がその立場だったらどう思うのかを深く考えて、親身な対応を心がけてください。

  • 強制せず受容する

強制する言動はNGです。

「違いますよ」と相手の考えや行動を否定したり、「怒らないで」とかたくなに衝動を抑え込ませたりせず、まずはその方のありのままの姿を認めてください。

  • ペースを合わせる・誘導しない

「何時までに寝て」や「早く食べて」など、一方的にこちらの都合に合わせようとするのではなく、相手のペースをきちんと尊重しましょう。

忍耐が必要ではありますが、こちらの要望や世界観を押し付けないことが大切なのです。

  • 嘘やごまかしをしない

感情的になっているとき、落ち着かせようと会話の中で嘘をついてしまうと信頼関係を損ねてしまう可能性があります。

できる限りその場しのぎの言葉でごまかさないように接しましょう。

まとめ

普段の生活において、余裕がなくなるとつい認知症の方へ私たちの現実世界を「分からせよう」とする行動が多くなってしまうかもしれません。しかし認知症の方にとっては、自分の世界の中で生きることこそが本人の癒しとなっている場合も多いです。

バリデーション療法を用いて私たちが理解を示すだけでも、認知症の方とのコミュニケーションが少しずつ豊かなものになるのではないでしょうか。

東海レーベンでは認知症をはじめ、介護に関する様々なお悩みにお応えしています。東海市近郊にお住まいの方で、介護の知識やテクニックについて詳しく知りたいという方はぜひ東海レーベンにまでお気軽にご相談ください。

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