介護による腰痛を軽減する「ボディメカニクス」とは?

要介助者の体に直接触れて行う介助を「身体介助」といいますが、この時つい力任せにしたり、無理な体制で身体をひねったりしてしまい、腰を痛める方は多くいらっしゃいます。特に、高齢者施設での腰痛発生率は80%にも上ると言われ、深刻な問題となっているのだとか。

そんな腰痛の対策としておすすめなのが、「ボディメカニクス」。てこの原理などを用いて最小限の力で介助する方法で、双方の負担を減らせる介護テクニックです。

ボディメカニクス9つの原則

ボディメカニクスには厚生労働省が発表している9つの原則があります。

それぞれにおいて意識するべきポイントをご紹介いたします。

(1)介助者の「支持基底面」を広くとる

支持基底面とは、身体を支えるための基礎となる面積のことです。

自分の影をイメージしてみましょう。脚をピタリと閉じて立った時と左右や前後に大きく脚を開いて立った時、床に投影される自分の影の面積が大きいほうが、より体を安定させるイメージを持てると思います。

支える側の介助者は脚幅を大きくとり、支持基底面が広くなるよう意識しましょう。

(2)介助者の重心を低くする

介助者の重心を低くして安定性を高めます。

腰から曲げるのではなく、意識的に膝から曲げるようにしましょう。

さらに重心を低くすることで、腰への負担が軽くなります。

(3)身体をできる限り密着させる

介助者と要介助者の身体をできる限り近づけましょう。

お互いの重心が近づき、ブレが少なくなるためコツを掴めば最小限の力で動かせるようになります。

(4)てこの原理を活用する

要介助者の体勢を変えるときは「てこの原理」を利用します。

支点・力点・作用点を意識することで体を楽に動かしましょう。

例えば要介助者を寝ている体勢から起こす時は、支点を頭や腕ではなく、腰(お尻)にするとスムーズに起き上がらせることができます。

(5)大きな筋群を使う

腕力に頼るのではなく、背中や足腰の大きな筋肉を意識して使うようにしましょう。

具体的には広背筋や大胸筋、大腿四頭筋(太腿の前方にある4つの筋肉)などです。

(6)介助者は身体をねじらない

介助者が身体をねじると力が入りづらくなり、重心が不安定になるばかりか、腰を痛める原因にもなってしまいます。

まずは動かしたい方向に足先を向けるように工夫しましょう。

(7)水平に移動させる

ベッドの上などで姿勢を変えたいときは上に持ち上げるのではなく、「水平に」滑らせるように移動させましょう。

上に持ち上げるより小さな力で動かすことができます。

(8)要介助者の身体をコンパクトにする

要介助者に腕や膝を曲げてもらい、身体をできる限り小さくすることで摩擦を軽減させましょう。

力を分散させずに済むので、その分介助がしやすくなります。

(9)ベクトルの法則を用いる

人間は立ち上がる際にまず前方へ傾いてから、膝を使って立ち上がります。

この順番を介助する時にも応用し、要介助者を立ち上がらせる場合、まず介助者がいる方向に傾いてもらい、要介助者が膝を使うタイミングに合わせて介助します。

要介助自身の力を最大限利用することで、介助者は最小限で介助を行えるようになるのです。

「声かけ」を上手く活用しましょう

ボディメカニクスを上手く活用する上で欠かせないのが「声かけ」です。

なぜなら要介助者と介助者、双方に負担の少ない介助を行うにはお互いの息を合わせることが重要になるからです。

たとえば身体に触れる前には「今から上半身を起こしていきます」など、介助者はこれから何をするのかを要介助者へ伝えるようにしましょう。

何よりこうした声かけは、身体的な負担を軽減するだけではなく、心理的にも信頼関係を築く上でとても大切な取り組みと言えるので、ボディメカニクスと併せてぜひ意識してみてくださいね。

まとめ

身体介助の負担を軽減するボディメカニクスの基本をご紹介しました。介護職のプロでも多くの方が腰痛を抱えていますから、慣れない方の身体的な負担は相当なものではないでしょうか。ぜひ介護テクニックを取り入れて、少しでも負担を軽減させましょう。

介護の基礎知識やテクニックをより詳しく知りたいという方は、ぜひ東海市の東海レーベンへご相談ください。実績・経験共に豊富なケアマネージャーが、皆様の介護のお悩みに寄り添って全力でサポートいたします。

 

関連記事