高齢者の失神について
高齢者の約3割が転倒するというデータがありますが、全転倒のうち3割程度は「失神」が原因だと言われています。
失神とは、脳全体に血液が行かなくなった状態によって意識がなくなり(一過性の意識消失)、その後回復するという病態のことを指します。
日本循環器学会のガイドラインによれば、失神は一時的に意識を消失し、姿勢の維持ができなくなることと定義づけています。
失神は幅広い年齢層で発生しますが、主に10〜20歳代と高齢者で多く見られます。
意識がないまま倒れる場合は受け身が取れないため、高齢者は失神で転倒してしまうと頭に重い後遺症が発生するケースがあり、早めの診断が望まれます。
今回は、そんな失神についてお話していきます。
失神の種類と原因
失神は、救急外来患者の1〜3%を占める年間78万人が経験する疾患ですが、種類を3つに大別し原因と共に詳しくまとめてみましょう。
中でも、高齢者は複数の原因が関与している場合が多いので要注意です。
なお、低血糖やてんかん発作でも意識を失い倒れ込む状態になることがありますが、失神には該当しません。
※神経調節性失神
完全に回復して後遺症が残ることはありませんが、意識を失って倒れた時に頭や顔面を強打する恐れがあります。
頭蓋骨骨折や硬膜下血腫、脳挫傷を引き起こす可能性があるので注意すべきです。
※迷走神経反射性失神
長時間立っている場合に起こりやすく、最も頻発する症例です。
自律神経のバランスが崩れ、心拍や血圧を正常に保てなくなるのが原因です。
過度の徐脈になり全身の血圧が低下するため、顔面蒼白になり失神にいたります。
頭痛、吐き気、冷汗などの前兆を伴います。
過労・精神的不快感・ストレス等から失神につながることもあります。10〜20歳代女性など、特に若年層に多いと言われています。
※頸動脈洞過敏性失神
高齢者は、首を回したり頸部を圧迫したりすると、頸動脈洞が刺激を受け、迷走神経反射により失神してしまうことがあります。
※状況失神
排尿/排便時、咳込み、食後などに引き起こされる失神です。排尿失神は内臓の迷走神経反射の一つで、膀胱が空になることが引き金になります。
※起立性低血圧
立ち上がった直後に血圧を調節できなくなる低血圧の一種で、自律神経の障害が主な原因です。
アルコール・薬剤や、猛暑・下痢などの脱水で発症しやすいです。高齢者や糖尿病など生活習慣病の人に多い症状です。
※心原性失神
心臓や心臓の血管の病気が原因で、予兆もなく失神が起こります。高齢者や生活習慣病の人に多く見られます。種類は次の2つが挙げられます。
他の原因より再発率が高く、治療を怠ると発症者の約2割が1年以内に死に至る可能性があると報告されています。
不整脈が主原因ですが、突然死につながる心疾患が見つかる場合もあります。
※不整脈による失神(アダムス・ストークス症候群)
不整脈で失神しても、来院時に不整脈を心電図検査で確認できないことが多いと言われます。
・徐脈性不整脈: 房室ブロック、洞機能不全症候群
・頻脈性不整脈: 心室細動、心室頻拍、ブルガダ症候群など
※器質的心疾患
心筋梗塞、弁膜症などの心疾患で失神した場合は、緊急処置が必要です。
失神の対策法
失神の対策として、検査しておくことをおすすめします。
医師の判断で検査を実施
・心電図検査
・24時間心電図検査(ホルター心電計またはイベントレコーダー)
・血中酸素濃度測定
・血糖値測定: 指先採血検査
・心臓の超音波検査
・ティルト試験
・血液検査
・脳波検査
・CT検査
・MRI検査
失神の治療法
自律神経機能の障害があれば、専門的な治療が求められるので、主治医に連絡しましょう。
起立性低血圧は、起立調節訓練や薬などで治療します。
心原性失神の場合、採血/心電図/心エコーで検査すると、心筋梗塞や心筋症などが見つかりやすいです。
心疾患の疑いがある場合は、入院治療を行うのが一般的です。
不整脈、心室細動やブルガダ症候群など突然死につながる病気などが見つかれば、ペースメーカー/カテーテル/除細動器の手術が必要になるでしょう。
失神の予防法
各種類ごとの失神の予防法を下記にまとめましたので、参考にしてみてください。
【神経調節性失神】
・日常の予防策
- 長時間起立しない
- 脱水を避ける…朝食をとる
- 過度の塩分制限をしない
- 飲酒を控える
- きついネクタイなどをしない
- 見上げたり後ろを振り返る動作は控える
- 倒れそうになったら、しゃがむか横になる
- 足踏み運動をする
・主治医に相談する
- 降圧薬/利尿薬/前立腺肥大治療薬の減量または中止
- 昇圧薬の服用(上記①が無効の時)
- 塩分補給
【起立性低血圧】
・日常の予防策
- こまめに水分補給… 脱水防止
- 急に立ち上がらない
- 倒れそうになったら、しゃがむか横になる
- 足踏みを行う
- 朝いきなり立ち上がらない
・主治医に相談する
- 降圧薬/利尿薬/前立腺肥大治療薬の減量または中止
- 昇圧薬の服用(上記①が無効の時)
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